Amazonプライム映画感想

Amazonプライム見放題映画の感想。ネタバレ有り。

フォレスト・ガンプ(1994米国)★★★★☆

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 今回は、前に見た『ショーシャンクの空に』と同年の1994年公開の米国映画『フォレスト・ガンプ
 『ショーシャンク』にアカデミー賞対決で勝ったヒット作である。

 

 見た感想を一言で述べると、日本人が見たら、そこそこ楽しめる映画。
 60~80年代の米国をフォレスト・ガンプという青年を通じて描いているので、米国人が見て喜ぶ映画。
 こういう映画が日本でもヒットしたあたり、90年代の日本人は米国への憧れが強かったのだと思う。
 日本人が見るなら『ショーシャンク』のほうをオススメ。 

  

 この主人公フォレスト・ガンプはIQ75だが、真っ直ぐに時代を駆け抜けた青年である。
 冒頭の『人生はチョコレートの箱。食べるまで中身はわからない』を始め、要所に名言を散りばめている。
 やや鼻につくぐらいに。

 

 このIQ75で頭の回転が良くないフォレストは、母親の意向で普通学校に入る。
 当然のことながら、そこでイジメに遭う。
 洋画を見ることの利点は「イジメがあるのは日本だけ」という偏見がなくなることにある。
 例えば、SF小説で映画化もされた『エンダーのゲーム』(Amazonプライム見放題動画ではない)のイジメ描写の凄惨さには息をつまる思いがしたものだ。
 ただし、イジメで子供が自殺するのは日本だけである。
 これはどうも宗教教育の問題であるのかもしれない。
 もしくは、コミュニティが年齢で限定されているところもあるのかも。
 いずれにしろ、イジメの抗議で自殺をするのは痛ましいことだし、絶対に間違ったことだ。

 「生きてこそ」わかることがあるということは全ての創作品が訴えないといけない。
 このフォレスト・ガンプでもダン小隊長がそんなこと言うけどね。

 

 この映画の最大の問題点はヒロインのジェニー。
 頭の回転が良くないフォレストの面倒を見てやった幼なじみ女子だが、大人になるとフォレストの愛を裏切り続ける。
 「サラマンダーより、ずっとはやい!!」のセリフで知られる、ゲーム『バハムートラングーン』のヨヨを思い出したぐらいだ。主人公に「おとなになるってかなしいことなの」と言い訳するスクウェア三大悪女の一人である。
 ただし、フォレストの愛をジェニーが受け入れない理由は、ちゃんと映画では描かれている。
 直接的に描いていないので、見終わったあとにWikipediaを読んで、なるほど、とうなずいたものだ。
(映画鑑賞後にWikipediaを読むのは、過去の名作を見る上での楽しみである)

 

 実は、ジェニーは幼少期に父親から性的虐待を受けていた。その心的外傷はフォレスト相手では克服できなかったわけだ。
 ちなみに、ジェニーは最後にフォレストと結婚してすぐ死ぬが、その病因はAIDSらしい。これも映画では直接的に触れていない。
 フォレストが時代を真っ直ぐに駆け抜けたとすれば、ジェニーは時代と寝た女である。
(この、時代と寝た、という表現も古臭いですね。90年代っぽい)

 

 このジェニー、薬物中毒になってたときに、飛び降り自殺をしようとするのだが、そのときのBGMがレーナード・スキナードの『フリー・バード』である。僕はレーナード・スキナードについてはこの曲しか知らないが、後奏のギターソロはいつ聴いても興奮する。
 この映画では、主に60年代のヒット曲がBGMで流されているのだが、僕は半分ぐらいしかわからなかった。
 そのなかで、やたらと多かったのがドアーズ。ソウル・キッチン、ブレイク・オン・スルー、ハロー・アイ・ラブ・ユー、ラブ・ハー・マッドリー。他にあったっけ?
 洋楽にくわしくない人は、こういうのを聴いても、あんまり感動しないかもしれない。

 

 登場人物でダントツに好きなのは、フォレストのベトナム軍隊時代の親友であるバッバ。
 彼はエビ漁師に生まれ、エビのことを知りながら育ち、軍隊後はエビ漁船の船長になるという夢をいだいている。
 とにかく、エビの話ばかりするのが、フォレストにはお気に入りだったらしい。
 さて、このバッバは戦死するのだが、フォレストは除隊後に律儀にもエビ漁船を買って、エビ漁師の道を歩む。
 頭の回転は早くないが、約束は守る男なのだ。フォレスト・ガンプは。
 そして、その真っ直ぐな生き方が周囲に希望を与える。
 その展開は、いささか劇画じみていて、うさんくさいというか、鼻につくところもあるけど、素直に感動することはできる。

 

 さて、Wikipediaによると、この映画は相当に米国社会の世相とコミットしているらしい。
 ジョン・レノンケネディ大統領とも、フォレストは対面するという当時としては先進的技術も使われている。

 
 そのなかで、もっともお金をかけたのが、オープニングの羽根のシーンらしい。
 北野武によれば、そのオープニングだけで自分の映画が一本作られるぐらいの金がかけられているらしい。
 お金ってなんだろう、とそのエピソードを読みながら考えたものである。

 

 ということで、この『フォレスト・ガンプ』は米国人なら見るべき映画。80年代米国人の希望と失望が描かれているので、それを知りたい日本人は見てもいいだろう。