Amazonプライム映画感想

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ショーシャンクの空に(1994米国)★★★★★

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 この『ショーシャンクの空に』は終身刑囚アンディーを中心に、人間の知性と忍耐の価値を描いた映画である。
 映画紹介の画像に使われる場面に至るまでの、劇的な展開が印象的であり、一度見たら忘れられぬ感動をもたらすだろう。
 多くの人が映画史上ナンバー1に推薦するのも納得の内容である。

 

 ただし、この映画はフィクション。実話をもとにした内容ではない。
 アンディーのように知性を持ち、忍耐力があったとしても、現実世界では報われるとは限らない。
 ただ、アンディーの自分の知性を他者に活かそうとする精神は見習うべきだ。
 成功者は自分を信じる者を幸せにしようとする信念を持っている。
 それだけじゃなくて、悪事に加担しても、自分が追及されないようにするしたたかさを持っているわけだけれど。
 
 その強さがなかったのがブルックス
 彼は刑務所内では図書係として温厚な人柄で認められた人物。
 しかし、仮釈放が決まった瞬間、他の囚人相手にナイフで脅すという愚行を犯す。
 なぜなら、長い長い刑務所生活から解放されることが怖かったからだ。
 アンディーやレッド(主人公のひとり)の忠告もあり、ブルックスは仮釈放を受け入れる。
 そして、自由になったブルックスだが、刑務所の外の世界は慌ただしくてついていけない。
 与えられた仕事はレジの袋詰め。誰でもできる仕事と思われるかもしれないが、客にせかされる作業はブルックスにとって苦痛でしかない。
 その苦痛から抜け出すために、ブルックスが選んだのは自殺だった。
 アンディーやレッドの対比として描かれる、このブルックスの自殺は、改めて人間の知性と強さについて考えさせられる。

 前述したレッドは刑務所で調達屋として知られるアンディーの先輩囚人。
 もともと、アンディーは刑務所生活にはついていけないエリート坊やという第一印象を持っていたが、アンディーの内面の強さにどんどんとひかれていく。
 もちろん、アンディーの刑務所内のいじめを止めることはできない。
 元銀行員のアンディーの品性の良さは、刑務所では憎悪の対象となる。
 だから、アンディーが何度もレイプされそうになる描写もある。レッドの語りでは実際にレイプされたらしい(もちろん、男同士の話)
 それでも、アンディーが耐えていたのは、希望を持っていたからだ。
 レッドは刑務所では希望は不要とアンディーをさとそうとするが、アンディーは聞き入れない。
 実はアンディーにはレッドにも話さない企みがあったのだが、それがわかるのは終盤である。
 それを知ることで、レッドはアンディーの強さの意味、正気を保つためにしていたことを知るのである。
 たいていの人は刑務所内の生活に慣れ、思考を停止した日々を過ごしているなかでも、アンディーは何かを続けていた。
 その何かが報われるかどうかはさておき、報われるチャンスを得るためには、それを日々続けていなければならないのだ。
 
 このショーシャンクという映画には、ほかにも心に残るシーンがある。
 屋上のビールや、刑務所内に流れたモーツァルトなど。
 ブルックスの自殺と、そのブルックスの同じ轍を歩みそうになるレッドのことを考えただけでも、この映画を見た意味があるというものだ。
 
 ただし、エンディングの場面に、僕はちょっと首をかしげた。
 あれが、米国人の理想の生活というものだろうか。
 僕ならばどうだろう? もし、ありあまるお金と時間を手に入れたら、僕がしたいことはなにか?
 ぱっと思いついたのが、タワーマンションの最上階でゲーム三昧の日々を送ることである。そして、スマホゲームのガチャを回しまくる。
 ああ、なんと知性がないことか、と僕は自分の願望にため息をついたものだった。
 他人に偉いと褒められたい。お金の心配をしなくていいぐらいのお金がほしい。
 そう願うのは悪いことではないかもしれないが、知性的とは言いがたい。
 知性とは、形のないものを形にすることであるかもしれない。
 願望を実現しようと日々努力することは、その人の強さになる。
 アンディーは、一見して所長に取り入って悪事に加担したといえる。
 いわば、自分の才覚でいじめられ側からいじめ側に回ったとも見える。
 しかし、それだけでアンディーが満足するはずがなかった。
 そのささやかな企みこそがアンディーの知性であり、それを実現できたのが忍耐なのだ。
 もし、僕の自伝映画を作るならば、ラストシーンはどんな風景にすればいいだろう。
 『ショーシャンクの空に』という映画を見たあと、僕はそんなことを考えるようになった。