Amazonプライム映画感想

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ブレードランナー(1982米国)★★★★☆

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 ストーリーはたいしたことないが、近未来都市を描く映像美が強烈な印象を残す映画。摩天楼を飛行船がゆっくりと進む街の下、無国籍で混沌とした看板と雑多な人の群れなど、想像力をかりたてるシーンが多い。。
 小道具もそれぞれ凝っていて、「サイバーパンクとはブレードランナーのような世界」と言われるほど、新たな世界観を作りだした映像は見るものを楽しませる。
 例えば『ニンジャスレイヤー』が好きな人は、その元ネタとして、この映画は楽しめるだろう。
 しかし、爽快なアクション劇ではない。最後の戦いなんて、主演のハリソン・フォードが鼻血を垂らしながら逃げ惑うだけである。見る人が求めるものによって評価が大きく分かれる作品だ。

  この映画はいちおうディックのSF『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作にしている触れ込みだが、中身は全然異なる。VKテストぐらいである。
 VKテストというのは、人造人間(レプリカント)と人間を区別するための心理テストのようなものだ。それが不合格だと廃棄処分、つまり殺されてしまう。サイコパスな人間だと、まちがいなく不合格、それどころか一般人でも精神状態によっては、合格できずに殺されそうな内容である。
 こんな不確定要素の高いテストを実施するならば、人造人間(レプリカント)と人間を明確に区別するものを義務づければ良いと思うが、この世界では心理テストで相手の反応をうかがうしか判別できないみたいである。
 いちおう、この人造人間(レプリカント)が量産された理由はあって、他の星を人類が居住可能な環境にするために、役立っているというのだ。
 現在はAIが目まぐるしい発展を遂げているが、人間と同じ形で同じ動きができるロボットの生産技術は進んでいない。その必要性がないからだ。
 自動運転にたとえてみると、その方法は2つある。一つは、AIが直接運転する方法、もう一つは人型ロボットに運転させる方法である。言うまでもなく、自動運転のために、わざわざ人型ロボットを作る企業はない。と、人型ロボットが人間に紛れ込む未来はなさそうである。どちらかというと、脳死状態の人間をAIが乗っ取るほうが現実的だ。
 
 さて、原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の話に戻そう。僕はこの原作を既読済である。だから、前に紹介した映画『未来世紀ブラジル』での主人公の部屋の謎技術が、この『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を下敷きにしていたことは知っていた。世界設定に関しては、ディック作品に近いのは『未来世紀ブラジル』のほうかもしれない。
 このディックの小説はタイトルがやたらと有名である。この題名をわかりやすく説明するならば【人間は羊の夢を見る。ならば、人造人間は人造羊の夢を見るだろうか?】ということだ。人造人間の心はなにか、という疑問を投げかける面白い題名である。
 そして『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』という小説には「ブレードランナー」という単語も、「レプリカント」という単語も出てこない。Wikipediaでは原作というより原案といったほうが良い、と書いていたが、まさにその通りであろう。
 話の展開も全然ちがう。はっきりいって『ブレードランナー』は物語としてはイマイチの映画だ。
 レプリカントとの対決も、バトル漫画のような盛り上がりはない。ただし、映像は美しい。特に、二番目のゾーラとの戦闘シーンなんて「そういう映像を撮りたかっただけだろ?」という展開である。
 このレプリカントたちは、謎のスポーツマンシップがあり、三番目のプリスの死(処理)なんて、ちょっとしたギャグシーンで、思わず苦笑してしまう。
 ラスボスのロイにしてもパンツ一丁になるし、対するデッカード(演ハリソン・フォード)は鼻血溜まってるし、勝ち目ゼロだし、どういう逆転劇を見せてくれるのかと思いきや、僕にとってはあっけない結末だった。
 そして、今作のメインヒロインはレイチェルというレプリカントなのだが、デッカードは彼女に愛を教える。この場面が何とも言えないほど気恥ずかしく、セクサロイド(セックス用人造人間)育成みたいな感じである。
 とにかく、主演のハリソン・フォードがとことんカッコ悪い。そりゃ、この映画を嫌うのも当然であろう。
 
 この記事を書きながら、Youtubeで紙芝居風に『ブレードランナー』のあらすじを紹介している動画があったので、それを紹介。
 


【すぐにわかる】ブレードランナー 手書き紙芝居【完全ネタバレ】Blade Runner Picture-story show

 
 うまくまとめていると思う。時間がない人は、この動画だけで『ブレードランナー』を見た気になれば良いだろう。
 ただ、この映画はストーリーが評価されたのではなく、それぞれのシーンの映像美が後世に多大な影響を与えた作品であることは、念頭に置いてほしい。
 香港をイメージしたという原色のネオンの色彩が強烈な街並みは、後世の作品でいくらでも見ることができる。例えば、ファイナルファンタジー7とか、サガ・フロンティアとかの街を連想した人も多いだろう。
 
 なお、Wikipediaによれば、デッカードレプリカント説は、撮影中に監督が思いついて、それを匂わせている場面を挿入しているらしい。

 ただ、ディックの原作からして、それはありえない展開だし、この映画の出発点もそうではない。
 こういう中途半端さが、僕に「ストーリーはたいしたことない」と言わしめていると思う。デッカードレプリカントだったなら、最初からそう決めて、伏線を散りばめて最後に明かせば良かったのだ。
 まあ、ストーリーよりも、ひたすら映像美にこだわったから、見る者に強烈な印象を残す作品になったのかもしれない。ということで、★は4つ。