Amazonプライム映画感想

Amazonプライム見放題映画の感想。ネタバレ有り。

下妻物語(2004日本)★★★★★

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 洋画ばかり見ていたので、今度は邦画。
 これは、フリル全開のロリータ・ファッション娘・桃子(演・深田恭子)と、特攻服のヤンキー娘・イチゴ(演・土屋アンナ)の不器用な関係を描いた作品。
 茨城から東京までロリータ・ファッションで通う桃子の、偏見に満ちた世界観が、そのまま映像に反映された手法が面白い。通行人や流れるTV、時には駅の車掌ですら、桃子の代弁者だったり反論者だったりする演出は、ロリータ・ファッションに拒否反応を持つ者も、彼女の内面世界に引きずりこまれるだろう。

  コミカルな内容だが、この映画で桃子の語る「人間は、大きな幸せを前にすると、急に臆病になる。幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気がいる」という独白は共感する人が多いのではないか。
 「人間は一人でも生きていける」と主張する桃子が、誰かの助けを必要とするまでの展開は説得力あるもので、フリルも特攻服も好きではない僕でも、この二人を応援したくなったぐらいだ。
 エンディングのスタッフロールで、ロリータ少女とヤンキー少女の二人の写真が映っているが、これが実に微笑ましい。フザけてるような演出なのに、締めるところは締める。観ていない人は、ぜひ観るべき映画だ。
 
 ただし、この映画は憧れても信じるものではない。原付をノーヘルで乗ると捕まるし、偽ブランド品を売るだけでロリータファッションに包まれた毎日を過ごすお金は手に入らない。この映画をマネても報われることはない。あくまでも、フィクションだから、ご都合主義だから、爽快感があるのだ。
 映画の原作は、嶽本野ばらによる小説。この作者の小説は、怪奇趣味や性描写が濃厚らしいが、この「下妻物語」には皆無で、そのあたりが人気になった理由だと、Wikipediaで書かれている。
 この映画でも、性描写はほとんどない。ヒロイン二人の性的魅力を強調した場面もない。それでも、飽きずに観ることができる、デフォルメした漫画的演出の数々が素晴らしい。
 この映画が公開されたのは2005年。今だったら、主人公の桃子に「発達障害」だの「統合失調症」だのレッテルを貼られて、まともに観ない人が多いかもしれない。でも、もともとこの映画は「共感できるはずのないヒロインに感情移入してしまう」劇的な展開を用意しているのだ。
 こういう映画を積極的に見ようとしない僕のような人でも、Amazonプライムで見放題だから、気楽に見ることができるはず。興味がない人も「下妻物語」というタイトルを頭の片隅に置いて、いつか余裕があるときに見てもらいたい傑作映画だ。★はもちろん5つ。